明日の千葉を見つめて
活動日記
PQMフォーラムの視察で静岡県へ行ってきました。
11/09/11

 今日は、米国同時テロ事件から10年、東日本大震災からちょうど半年の節目の日ですが、このような日に、防災先進県である静岡県の危機管理体制について視察できたことは、本当に意義深いことと思います。

 まず、静岡県庁の5階に設置されております「危機管理センター」で危機管理監代理の小川様と危機専門監の杉浦様から「静岡新災害情報システム」の概要についてご説明頂きました。

 ちなみにこの「危機管理センター」は、3年前に、間仕切りが不要なので、ワンフロア形式で改築したものです。いざという時にすぐに対応できるよう、班ごとに島ができていてかなり合理的な作りになっていました。特にゼッケンが置いてあり、これを着ていれば確かに誰が何の担当か一目瞭然にわかるようになっていたのは大いに参考にすべきです。

 さて、本題の「静岡新災害情報システム」ですが、総務省の委託事業「平成22年地域ICT利活用広域連携事業」において作成しているもので、当初は3年間で3億の事業でしたが、国の事業仕分けで大幅減額され、1億5,900万円で打ち切りとなったため、これで当初の目標通りにできるか不安は残ると心配してました。

 なお、設計は、エコポイントで実績のあるセールスフォースに委託しており、耐災化を図るため、クラウドコンピューティングにて構築しています。

 開発目的は以下の3点です。

・東海地震の逼迫性を踏まえた激甚災害対応

・救出救護に必要な情報の収集

・支援要請を含めた情報の共有

 

 静岡県では、平成21年8月11日に駿河湾では最大震度6弱(マグニチュード6.5)の地震があり、その際にはこの危機管理センターは出来ていましたが、システムが未整備だったため、市町村との情報共有が出来ませんでした。また、去年の9月8日の台風9号が小山町に大被害をもたらした時も、地図情報の共有システムが出来ていなかったため、被災場所の特定が電話のやり取りだけでは困難で、トップ同士の電話でようやく場所がはっきりわかったことから、やはり情報の共有化が重要と痛感したとのことです。

 そこで、整備にあたっては、「共有」と「可視化」が一番の目的としたところです。

 特徴としては、県の責務と市町の責務も両方カバーできるようにし、入力も県、市、町のどこでもできるようにした。IDとPASSがあれば、一般の端末からも入力はできる仕様で、写真も転送できるので、被害状況が一目瞭然。ただ地図情報システム(GIS)を動かすにはアプリが必要で、これは限定800アカウントとなっているとのこと。

 
 このシステムのポイントは、クラウド化によりサーバを被災地におかないこと。地図情報システムによる可視化。そして県民への情報発信として放送事業者やエリアメール、閲覧用に情報提供を強化しているところです。

 今後はスマートフォン対応、GISの完全クラウド化、衛星の活用、YahooやGoogleへの情報提供などを構築していく必要があります。

 

 概要の説明ののち、実際にテスト画面を見せてもらい、実際の動作状況を確認させてもらいました。インターフェイスの特徴としては、階層を深くしないように心がけたようです。

 

 質疑応答の後、今度は、静岡県が岩手県への支援活動で学んだ課題などを報告をして頂きました。

 下手に書くと「岩手県への悪口」になりかねませんが、岩手県の物資支援拠点は盛岡市より北の滝沢村(被災地まで3時間かかる)の産業展示館「アピオ」に設置されており、非常に不便だったとのこと。静岡県の現地支援調整本部は遠野市にあり、ここならそれぞれの被災地にスムーズに物資を運ぶことができたと憤っておりました。また県の職員はあまり現場に来なかったようであります。この問題については、都市問題研究7月号の冒頭に熊坂氏が同様なことを書いているようです。細かい話は誤解を生じそうなので載しませんが、以前、松本龍元復興担当大臣が県に対し怒ってあのような態度・発言をしたのは、背景にこういうことがあるのかしれません。

 結論から言うと、非常事態ゆえ、かえって頭の切り替えが困難で、危機管理の基本である「巧遅は拙速に如かず」でやりたいが、通常通りの論理的・きれいな形になりがちになってしまうようであります。

 

 場所を移動し、今度は「静岡県地震防災センター」で、昼食を取りながら、職員の方々と簡単な意見交換をしました。

 食事ののち、このセンターの概要について説明を危機情報課長(当センター所長兼務)の近藤様、当センター所長代理の望月様から受けました。

 このセンターは、平成元年の開設で、平成15年に宝くじ助成を活用し大規模改築し、平成21年には人材育成用に改修したようです。

 平常時は、地震防災に関する知識と対策についての啓発、自主防災活動の活性化の支援、職員研修、地震対策資料の収集と県民への情報発信を行っていますが、災害時には、県災害対策本部の後方支援基地になっており、簡易ベッド100台、風呂場設置など宿泊施設になっております。ちなみに、そのうち50台の簡易ベッドは、遠野市へ持っていって、そこから、山田町、大槌町に持っていったりしているそうです。

 今年度からTSUNAMIシアターの映像を開始しましたが、作成そのものは震災前なので、CGで作っていますが、実際の津波と同じような感じにできているのは、びっくりしたそうです。

 主な事業としては、インストラクターによる「体験学習(展示・体験・講話)」、県内6大学の先生を派遣してもらって防災学講座するといった「企画公開講座・研修」、「企画展」、「防災情報の発信」、図書館を設置し「地震防災ライブラリー」として関連図書約9000冊が蔵書されています。
 なお、運営体制については、職員4人、非常勤職員11人の15人体制で、以前は財団に委託していたものの、平成15年から直轄に戻し、出先機関ではなく駐在扱いになっているようであります。

 来館数は、多い日は600名ぐらい 1日平均130名ぐらいで、外国人(特に中国)も多くなっています。しかし、震災後は外国のお客さんは激減したようです。一方で、防災意識の高まりのためか、個人客が増えたようであります。
 


 概要説明後、センターの見学をしました。まずは、TSUNAMIシアターを見て、インストラクターから入口の床に貼ってある静岡県の大きな地図を見ながら、安政の東海地震や東日本大震災の教訓を基に東海地震への対策をレクチャーしてもらいました。簡単に言えば、東海地震は、阪神淡路と東日本大震災が同時にやってくるようなもので、断層型の直下型地震で、津波も到達時間が5分程度と本当に避難が大変な地震になると想定されております。

 その後、起震機による地震体験、防災用品の展示など見て、再度研修室にて、「静岡県の東海地震対応と図上演習等」についてレクチャーを受けました。

 まず、資料に基づき、東日本大震災から得た教訓・学んだこととして、「想定外という言葉はあまり使わない」「日本の防災は、市町村が単位。しかし、市庁舎そのものが被災してしまうと対応が困難になる。」「津波対策の見直し」といった課題に抽出し、現在では、主に「短期的な対策」に取り組んでいるとのこと。特に情報収集がうまくいっていなかったので、さらに強化したいそうであります。


 これまでも静岡県では、危機管理局へ市町村職員、警察(最近はないが)や教員から派遣職員を受け入れて、培った知識・経験を帰ったところでリーダーとして発揮してもらう人材育成を行ったり、支援部隊スペクトを別なところに組織しるといった独自の取り組みをしています。また方面本部という組織体制は静岡県の特徴となっています。
 

 何といっても先もほども書いたとおり、東海地震の特徴は、津波の到達時間が短く、備えが難しいのですが、被害想定を安政東海地震の浸水地区をベースしており、昔は堤防もなかったのでそんなに被害はないのではないかという地元の批判もあったようですが、県としては、堤防が機能しないことを考慮したり、少し余裕幅をもった対策をして欲しいとお願いしている状況で、市や町からは具体的に内容を示してほしいとの要望が来ているので、学識経験者で津波分科会の中で議論して解決策を提示していきたいそうです。

 また、東日本大震災では、無線がうまく機能しなかったので、解決策としてエリアメールで、防災行政無線が入るラジオの購入、子局の整備、コミュニティFMの活用などを考えているようです。

 さらには津波避難ビルの指定を県の補助対象にし、蓄光材を活用した看板を設置するなど、市町が選べるメニューを創設しました。ただ財政上の理由から限界もあるの実情です。

 県としては、「地震だ、津波だ、すぐ避難!」を実践してもらい、警報が鳴る前に避難して欲しいとのことで、「自助」を強調しています。
 一番の課題は、要援護者対策で、本当は高台に引っ越して欲しいみたいです。

 その他、地震対策アクションプログラム2006(P.28)、TOKAI-0(P.29)、受援計画(P.19)、危機管理体制、人材育成(ふじのくに防災に関する認証制度)などのレクチャーを受けました。特に人材育成の課題は、育った方が組織の中できちっと機能(活躍)する仕組みづくりについてで、出来れば、知事と危機管理監の関係と同じように、自治会長と防災リーダーの関係を作れればいいのではないかと考えています。今後モデルケースを実施する予定です。
 
 図上演習については、課題として人事異動があるとこれまでの蓄積が真っ白になってしまうことが挙げられることから、ステップ型の演習・研修を心がけており、新年度前に立ち上げ研修、新年度に入ると参集訓練(立ち上げ訓練)、物資の需給訓練、医療の支援など、分野別訓練を行い、そして、全体図上演習という流れになっております。さらに先輩が後輩を指導することでノウハウの蓄積ができるようになります。詳しくは近藤様も執筆している「図上演習入門」(内外出版)に書いてあるようです。

 最後に、ふじのくに危機管理計画について簡単に説明を受けました。特徴としては、これまでバラバラだったものを一本化し、データベース化したことです。常に最新の情報にしておき、いざとなったら、動的データに切り替えることができます。

 さらに、危機報道監を設置し、それぞれの情報は、全体的に束ねて一元的に情報発信するようにしており、報道に対してもなるべく情報を出し、信頼関係を構築するように心がけているようです。

 近藤様は、専門家であるため、非常に詳しく、さらに熱意をもって語って頂きました。残念ながら、時間の関係でとことん聞くことはできませんでしたが、先進的な静岡県の状況を聞くことができ、非常に参考になりました。この場を借りて御礼申し上げます。

 一団は、センターをあとにし、静岡駅の居酒屋で、参加者同士の意見交換会を行いました。みんなが口を揃えてびっくりしたことは、やはり来客数が多いことであります。我々が施設見学をしている間も引っ切り無しに来館者が見えてました。また、防災資機材が雑然と並んでおり、普通はああいう場での展示は行政の推奨商品ととらわれがちになりますが、静岡県のような展示方法だとどれが推奨かわからないので、逆に良いのではないかとの意見がありました。
 また、埼玉県の職員が自分の職場との意識の違いに驚いてました。埼玉は災害が少ないので、職員の危機管理意識は低いようで、実際に参集訓練の際、何をやることがわからないし、何処に集まるのかもわからず、あまつさえ入り口すらわからなかったようです。
 しかし、先生からは、逆の見方を教えられ、なるほどと思いました。それは、役人は訓練を上手にやりたがる傾向にありますが、本来、訓練というのは課題を見つけることが本当の効果であるという考え方です。先生に言わせれば、ある意味、埼玉県の失敗は訓練の効果があったと言えるのであります。
 これ以外にも逆説的なものがいくつかあり、例えば、静岡県は岩手県に支援に行っていますが、実際は現地は静岡市などの市町職員が行っています。何故なら県は罹災証明発行などの業務は普段やってないから出来ないわけで、そうすると県は居なくても良かったのではないかという考え方も成り立ちます。また、県内でも防災教育が行き届いたせいで、高齢者には地震が来たら助からないというある種の諦め観が芽生えつつあるようです。さらに、県が仕組みを作れば作るほど市町が依存症になってしまい、弱体化する嫌いがあります。最終的には業務は基礎自治体がやるんだという自覚を持って欲しいとの意見が先生からありました。
 逆の立場からも見るというのは本当に大事だと気付かされました。

 久々のPQMの勉強会でしたが、本当に勉強になりました。