明日の千葉を見つめて
活動日記
公共サービスのCo-production
11/12/04

 今日は、明治大学駿河台キャンパス・紫紺館で行われたPQMフォーラム総会・研究会に参加してきました。
 PQMとは、Public Quality Management(公共品質管理)の略で、当フォーラムは、公共分野における品質マネジメントを研究、あるいは実践する者が、交流し、公共品質マネジメントに関する新しい知見を創造、探求することを目的に、明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科北大路ゼミの卒業生を中心に組織された団体です。詳細はHP(←クリック)をご参照ください。
 
 今回の研究会は、講師にバーミンガム大学(英国)地方自治研究所のボバート(TonyBovaird)教授とガバナンス・インターナショナル代表のレフラー(ElkeLoeffler)博士をお招きし、「公共サービスのCo-production」というテーマで、ご講義頂きました。

 Co-productionという言葉は公共の分野ではあまり馴染みがないと思います。この言葉は、読んで字の如く、「共に」(=co)「生産」(=production)という意味から成り立っているので、まさに「協働」という意味になると思うのですが、一般的に協働は、partnershipあるいはcollaborationと英語表記されることが多いので、Co-productionという言葉はあまり見かけません。しかしながら、私の感覚では、partnershipあるいはcollaborationという言葉は、単なる「協力」という意味に過ぎず、むしろCo-productionという言葉の方がには、生産性という結果を含んだ概念であることから、まさに日本で言う「協働」に相応しいと思っております。

 流れとしては、まずボバート教授からはCo-productionの導入として概念的なものを説明を受けました。

◎導入
 シェリー・アーンシュタインの参画の梯子('Sherry Arnstein' Ladder of Participation(1969))を用いて、日本の行政がどの状況にあるか質問され、会場の大多数が、5段階目(懐柔)にあると回答されました。本来はどの段階にあるべきかということについては、正解はなく、状況次第であるというのが教授の考えであります。

◎何故Co-productionか
 医者と患者に例えると、医師は治療できるが、痛みを知っているのは患者。患者がきちんと痛みを説明できないと医師は治療できない。痛みがどの程度かも医師にはわからない。痛みの軽減などマネージすることもできない。患者が適切なタイミングで適量を服用しないと治療にならない。つまり、患者(ユーザー)は重要な成功要因。さらにエキスパートの患者は一般の患者を助けることがある。例えば、治療方法の説明するにあたって、医師に説明受けるのは当たり前だが、同じ患者の立場から説明するのは効果的。

◎Co-productionの特徴的な原則
・Co-productionにおいて、ユーザー(サービスの受け手)は、受動的な消費者というより、活用できる資源を持った者と考えられる。

・Co-productionでは、スタッフとユーザーの間に、上下関係というより協力的な関係を作る。

・Co-productionでは、サービス自体よりむしろアウトカムに到達することに注目する。

・Co-productionは、もしかすると政府の資源投入に代わる、ユーザーやコミュニティからの資源投入を行う。つまり、政府に変わってユーザー側が資源投入してくれる可能性もある。しかし、逆に、かえって政府からのコストを支出しなければならない場合もあるだろう。


◎様々なCo-production(※以下は、直訳なのでちょっと意味不明なところがあるのは勘弁して下さい)
・政策のco-planning(共同計画) = 討論型の参画、現実的で白紙からの計画

・サービスのco-design(共同設計) = ユーザーコンサルテーション、革新創造の研究室

・サービスのco-commissioning(共同報酬?要求性能検証?) = 権限委譲された交付金システム、共同募金

・サービスのco-financing(共同資金調達) = 基金の積み立て、手数料の賦課、増税への同意

・サービスのco-managing(共同管理) = レジャーセンターの合同企業(トラスト)、公共資産のコミュニティによる管理、学校内への参加

・サービスのco-delivery(共同供給) = 専門的な患者(対等なサポートグループ)、給食配色サービス、近隣の見守り

・サービスのco-monitoring及びco-evaluation(共同評価) = テナントによる調査、オンラインでのユーザー評価

co-commission→co-design→co-deliver→co-assess→co-commisssionのサイクル


◎潜在的な制約
・全ての人がco-produceを望むわけではなく、全ての人がco-produceできるわけでない。多様なサービス供給モデルやインセンティブが必要である。

・co-productionは、一般的に「無料」ではない。co-productionの潜在的可能性が現実のものとなるためには、資源や投資が欠かせない。

・行政は誰が貢献できるか勝手に決めがちである。

◎コープロダクションにリスクはあるか?

・全ての変革にはリスクがつきもの。しかし、今日の行政は急進的な変化が必要。もしかしたら、co-productionの方がリスクは少ないかもしれない。

◎結論

・市民参画に対する市民の大きな潜在的意欲。しかし、それは、市民が自分が価値ある役割を果たせると感じた時だけである。

・参画とco-productionに適する場合と適さない場合を明確にする必要がある。

・行政が市民をどこまで信頼できるか。

・今は、ベスト・プラクティス改革の時代である。外の世界(民間や海外)で何が行われているかを学び、それを公共サービスに取り込むべきである。

 

 以上、実は教授もまだはっきりとした結論が出てないので、日本のベスト・プラクティスを教えてほしいという言葉で講演を閉めていました。 

 続いて、ガバナンス・インターナショナルのレフラー博士からは、Co-prodctionのヨーロッパにおけるケーススタディの紹介を受けました。

◎導入

 「視覚障害の高齢者が必要とするものは何か?」

 これは、バーミンガム大学の研究で、行政職員と視覚障害の高齢者それぞれに質問したものである。その結果、行政のマネージャーや職員が考える必要なものの1位は、「公共サービスについての色々な情報(64%)」で、高齢者が真に望むものは「他の人と知り合い、友人をつくること(91%)」と全く違う回答である。つまり、このことから導かれる結論は、「当人に聞かなきゃわからない。」つまり、決めつけはダメだということとである。
 ただ、バーミンガム大学の研究で足りない設問が2つあり、それは、「貴方には何ができるのか。ひとつは自分のために。もうひとつは他人のために。」という問いである。必ず、人は何かに貢献したいという欲求がある。

◎ケース0:文京区(日本)

 ボバート教授への質問の中で、文京区の自治会活動の話が出たので、ここで自治会活動について考察する。

 自治会は、co-prodctionなのか?単なる自助なのか?
 清掃業務や回覧板の回覧など、役所の下請け的な業務もあるが、ほとんどが自助。ということは、もっと行政と協力すべきである。
 ヨーロッパでは、co-productionについて環境、健康、地域安全の分野で50%前後まで浸透しているが、逆に言えばまだ潜在的な可能性がある。

 「どのくらい参加できますか?」という質問をした方がいい。意外な結果が出る。30%近くがもっと参加したいと回答している。おそらく日本でも同様の結果がでるのではないか。

◎ケース1(co-commissioning):ベルリンリヒテンブルグ(ドイツ)
 市民が予算作成の意思決定に係る。市民に10のシールを渡して、市民が考える必要と思われる事業にシールを貼る。この投票行為はインターネットでもできる。

◎ケース2a(co-design):モデナ(イタリア)
 若者の興味は?他の人と話したがらない内容。しかし相談はしたい。

 そこで、インターネットを使って匿名で相談。若者が若者のために作ったサイト。ただ若者だけでなく、専門家と一緒に作った。専門家は若者言葉は話せない。このサイトは若者言葉で書いてある。お役所用語ではない。

 ほとんどはICTマネージャーに任せているかもしれないが、そういう人は人と話すのが苦手なんで、専門家だけでなく、ユーザーに参加してもらった方がいいというサジェスチョン。

◎ケース2b(co-design):ストックポートカウンシル(イギリス)

 同じような考えでウェッブサイトを作ったのが、ストックポートだが、こっちは社会福祉の分野。HPの立ち上げ当初、意味が分からなく電話での問い合わせが多かった。そこで、ユーザーと協働でHPを作ることによって、行政側の問い合わせ対応が減り、30万ポンド節減に繋がったという事例。

◎ケース3(co-delivery):南サマセット(イギリス)
 警察のスピード違反取り締まりに住民が協力した事例。この結果、スピード違反車両は40%減少。一般的に警察とのco-prodctionはためらう。

 バーミンガムでは、学生がこのスピード違反を取り締まっている。学生に取り締まれると恥ずかしいので、さらに減るらしい。

◎ケース4(co-assess):カムデンロンドンボロ(イギリス)
 あなたの自治体は満足度調査はしていますか。その方法は難しいが、市民からのフィードバックを簡単にする方法がある。それはソーシャルメディアの活用である。
 カムデンは、苦情処理にツイッターを活用した。
「何故ラッセルスクエアを閉鎖したのか?カムデンはさぼっているのか?」という市民からのツーとに対し、市はすぐ返信。その結果、市民は感激し、他の市民にリツイートやブログに書き込み拡散。


◎co-productionの5つのステップ
1 現状分析
2 選択と集中: 優先順位をつける。何でもかんでもコープロダクションすればいいというものではない。マトリックスを活用。
3 人を巻き込む: サービスのユーザーに聞くこと。「貴方には何が出来ますか?」もし体系的にやりたいのであれば、市民に調査を細かく行う。
4 マーケティングが必要: インセンティブをつくる。合意書みたいなものが必要。継続的に実施するために。
5 育てる: まずは始めること。そして成長させる。もっと他の人たちを連れてくるようにする。自分のイニシアティブを披露する。組織のマネジメントシステムを整理する。意味があるのかないのか。
6 まずは始める: とにかくまずは始めること。

◎質疑応答
 リスクはあるのか?
 やはり継続性の問題が挙げられる。同じ人間だけでやらない。常に新しい人間を巻き込む(成長する)必要がある。
 提供にコストがかかりすぎるものもある。

 リスクの再考も必要。ほとんどは行政側の都合のリスクが多い。ユーザーに選択肢を持たせるのにリスクがあるという人があるが・・・。
 co-productionをシステムやツールとして導入すると失敗する。
 co-productionには原則がある。市民に対し「何ができるか」と問うと同時に「市民と何をする用意があるか」と行政職員にも聞いて欲しい。
 ドイツでは南サマセットの例は当てはまらない。何故なら、ドイツでは警察のタスクを代行することはあり得ない。ドイツでこの事例を紹介すると非難される。
 ドイツとUKを比べると、ドイツの方が法律が強い。(法治国家の色彩が濃い?)だから、行政訴訟も多い。規制も複雑。それに対する相談も多い。ドイツと日本は更なる官僚主義にならないように気をつけないと。何100ページものマニュアルを作らないように。

 

 個人的な感想としては、「市民と行政との協働」というフレーズが広く使われ始めて久しいですが、これまで我が国では、この「協働」を体系的に整理してなかったのではないかと感じました。そういう意味では非常にいいサジェスチョンでした。

 地方分権の進展によって、益々市民の力が必要になってきます。 「協働」がうまくいくためには、市民と行政との関係が成熟した対等な関係でなければならないと思いますので、これからたくさんの摩擦を生じさせながらも一歩一歩お互いを成熟させていく必要があると思います。まずは、踏み出す一歩が大事ですね。