明日の千葉を見つめて
活動日記
八ツ場ダムの事業継続について
11/12/22

 本日、「群馬県の八ッ場ダムの本体工事について、国土交通省は事業を継続する方針を決め、関係自治体に通知した。」との報道がなされました。今後、ほとんどのメディア論調は「またマニフェスト違反か・・・」という民主党批判に集中することが予想されます。
 個人的には単なる批判は建設的ではないという理由から避けるようにしています。そこで、今回の問題についてもう一度何が論点なのか感情論を極力排して考えてみたいと思います。
 この手の問題が複雑化するのは、得てしてマスコミのミスリードと全く事業に関係ない偏ったイデオロギーの方々がこの種の問題を利用しようとしていることに起因しています。そして、「感情論」を用いて人々の共感を得ようとします。当然、人間が行うことですから感情論は大切です。しかし、感情論はロジカルな思考を阻み、主要な論点をずらす嫌いがあるため、まずは感情論を排すことが大事です。今回は「自然を守ろう」的な主張も感情論として分類しています。

 さて、議論する上で一番肝心なのは、「目的」であります。何のためにダム事業を行うのかということです。
 とにかく反対派の人は、政治家や官僚のダム利権だという方が多いのですが、少なからずそのような要素もあるかもしれませんので頭からは否定はしませんが、あくまでそれは副次的なものであって主たる目的ではありません。 ダム事業の主たる目的は、間違いなく「治水」と「利水」にあります。古来より治山治水は政治の基本と言われており、山間地域の多い日本において「治水」というのは最も重要な政治課題であります。ただ「治水」だけならダム事業以外にも堤防建設など方法はたくさんあります。だからダムは必要ないという論調が高まるのも無理はありません。そこで、もう一つの「利水」という目的が重要になってくるのです。実は、首都圏の水需要に関しては、現在の水源だけで充分賄えており、将来的にも人口減少社会に入ってきていることから、これ以上の水源開発は必要性が薄れてきています。本市が霞ヶ浦導水事業からの撤退を決めたのもこのような背景があるからです。しかし、これもあくまでも平時の話であり、雨が降らなくなり渇水になった時にどうなるかということです。最近は渇水による取水制限というのがあまりないので記憶が薄れてしまっていますが、当然日照りが続き、渇水になれば、市民への水の安定供給ができなくなります。つまり、「治水」や「利水」のそれぞれにおいての代替案はあっても、両方を同時に行う方法についてダム以外の合理的な手法が日本の地理的条件を当てはめると見当たらないのが実情であります。だからダムをつくるわけです。ダムの必要性については、各地の行政訴訟においても裁判所が認めているところです。蛇足ながら、この手の行政訴訟の原告にはダム予定地の住人は誰もいないということを頭に入れておいて欲しいと思います。
 ただ、誤解して欲しくないのは、ダムが万能だと考えているわけではないことです。あくまでも治水対策のひとつに過ぎず、堤防建設などの他の対策も同時に進め、総合的に治水対策を図っていくことが重要であることは言うまでもないと思いますが、一応申し添えさせて頂きます。

 次の議論は、「どこに造るのが最も効果が高いのか」ということです。
 利根川上流域の約1/4を占める吾妻流域には大規模な洪水調節施設がありません。つまり、その吾妻流域に豪雨が降った時には、それを堰き止める手段がないと言えます。八ッ場ダムは、洪水調節容量が利根川上流のダムの中で最大となっており、治水効果が大きいダムと言われています。ちなみに、八ッ場ダムには「カスリーン台風」並みの台風に対する治水の効果などないことを、国土交通省も認めていると反対派の方は言いますが、あくまで必要性で強調される「カスリーン台風」の時は、吾妻流域にはそれほどの降水量はなかったため、効果がほとんどないのは当然であり、これも質問書の答弁の内容を誤解を招くような報道をし、ミスリードをしていると言ってもいいでしょう。その他、ダムに適さない地質であるということについても、既に国土交通省は地質調査を行い否定してます。
 ただいずれも国土交通省の意見や調査なので信用できないと言えばそれまでです。あとは自分自身で調査して頂いて多角的な視点から判断して頂きたいと思います。
 
 そして、次は費用対効果を議論する必要があるでしょう。この問題の一番の課題はここにつきると思います。総事業費はかかり過ぎなのは間違いありません。また、今後の投資額も予定額を大幅に上回ることが予想されます。さらに維持管理経費を踏まえなければなりません。そこまで投資しても必要なのかどうかということです。
 国土交通省はここもしっかり費用便益分析を行い、有識者会議でも検証をしております。ただ私自身はこの部分に関して懐疑的な部分が多く、もう少し研究してみたいとは思っております。

 今回、国土交通省が事業継続をする方針を出した理由は、以下の4点からだと発表しています。

 ① 利根川流域の平野部はかつて氾濫原であり、安全な土地を生み出していくために長年に渡り様々な治水対策に取り組んできたが、人口・資産の集積により災害ポテンシャルが高いという流域特性があること
 ② ①の流域特性を有する利根川においては、河道掘削等を推進していくことに加え、即効性のある治水対策が特に求められており、八ッ場ダムは、遊水池等の代替案と比較して、短期間で、かつ、大きな効果が得られる対策であることが検証において確認されていること
 ③ 東日本大震災から得られた教訓を整理した知見・情報により、例えば浅間山噴火の際には八ツ場ダムが泥流等への安全装置として機能すると考えられること
 ④ 地域に対して重い責任を担う1都5県知事のご意見についても、重く受け止める必要があると考えたこと

 上記以外にも、当ダム事業に関する60 年来の経緯を踏まえ、下流域の受益のために、何代にもわたって犠牲を強いてきた水没地区及び住民の方々の生活再建に取り組んでいくことも当然大きな理由の一つになっています。

 これらの理由を見ると継続の決め手は、東日本大震災による防災意識の高まりにあると言えます。どうしても防災や予防というは数値化しにくく、評価が難しいため、どうしても短期的な視点ですと、事業仕分けの対象になり易いのは間違いありません。ある意味、震災は我々に予防意識の重要性を教えてくれたのかもしれません。
 私は、結論的に事業の継続を支持しますが、事業執行にあたっては常にモニタリングを行い、地域住民や国民の理解を得られるよう情報発信に努め、今後の適正執行に臨んでもらいたいものです。